花粉症になる人、ならない人【前編】

スギ花粉のイメージ画

筆者が子どものときは、みんながスギ花粉まみれでした。スギ鉄砲といって竹筒でスギの実を玉にし、パチンと撃つ遊びがあって、玉になるスギの実をどれだけでも多く集めるために、花粉で体中がまっ黄色になったものです。それでも子どもたちは誰も花粉症にはなりませんでした。ではあの頃のカラダと、今のカラダは違ってしまったのでしょうか?どうやら殺菌や微生物までも排除してしまう、現代の「きれい社会」や「便利社会」の裏に、その答えの一部がチラッと見えてきます。

アレルギーは昔にはなかった現代の病

花粉症とは、ひと言でいえば「花粉が原因のアレルギー疾患の一種」。カラダの中の免疫機構が花粉を細菌と同じように、「カラダに害を及ぼす危険なもの」と判断して、これを排除しようとするカラダの働きの結果なのです。具体的には目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが続きます。医学では生きていく上で必須な免疫反応の中で、カラダに不都合な免疫の反応を「アレルギー」と呼んでいますが、なぜ今になってスギ花粉が悪さをし始めたのでしょうか。

1960年代から急速に増加したアレルギー疾患

日本で初めてスギ花粉症の症例が認められたのは、今から約50年前。1963年のことでした。患者さんは栃木県日光市に住む成年男子でしたが、日光のスギ並木は400年近く前に植えられたもので、スギ花粉は昔から飛んでいたのです。ということは昔の人はスギ花粉と共存できる機能が、体内に備わっていたのだと推測できます。こうしてスギ花粉症は第一号患者が出た1963年から毎年のように増えていくのですが、1960年代の中頃は結核や寄生虫の感染者が減り、清潔志向が高まっていく頃と重なります。それと同時にそのほかの花粉症やアトピー、ぜんそくなどのアレルギー疾患も猛威をふるい始めました。

花粉症のつらい症状の正体は「抗原抗体反応」と呼ばれるもの

有害な生物やウイルス、物質がカラダに入ってくると、この反応が起こりますが、ここでそのメカニズムについてご説明します。

  1. 花粉侵入→ヘルパーT細胞が異物と判断し、B細胞に抗体を作るように指令
  2. B細胞がIgE抗体を作る。作られた抗体は蓄積され、花粉の侵入に備える
  3. 再び花粉侵入→鼻粘膜・目・喉の肥満細胞がIgE抗体と結びつく。肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質を放出する
  4. 症状が現れる。
    • 異物ととらえた花粉を洗い流すために鼻水が出る
    • 花粉を吹き飛ばすためにくしゃみが出る
    • 花粉が更に侵入するのを防ぐために鼻が詰まる
    • 免疫細胞が作り出す活性酸素により、様々な炎症がおきる
  5. これらの症状を抑えるための対症療法として、抗ヒスタミン剤を飲む
  6. 抗ヒスタミン剤により炎症を無理やり抑え込むため、症状は少し減るが副作用が出る
    • 眠くなる
    • 粘膜や皮膚等が全て乾くので、バリア機能が衰える
    • 太る
    • 倦怠感におそわれる

どうですか?このメカニズムに対抗するために用いられる抗ヒスタミン剤は、悪循環を招いているだけなのがおわかりですか?